ハゲ・薄毛は気になりますよね。

そういった中で、「筋肉トレーニング(筋トレ)をすると、ハゲが広がる。薄毛がひどくなる」という、ほとんど都市伝説のように広がっている話があります。

しかしそんな単純なものではありません。
ハゲ・薄毛の原因次第でいい方にも悪い方にも転ぶ可能性はあるものの、どちらかといえばプラスになることのほうが多いでしょう。

ほとんど都市伝説並み 「筋トレするとハゲる」の噂

筋トレすることで起きる変化のうち、ハゲ・薄毛と関係があると想像しやすいのは、男性ホルモン・筋肉(たんぱく質)・活性酸素あたりでしょう。

ハゲ・薄毛と男性ホルモンの関係は深い ただし単純ではない

すでにご存じとは思いますが、ハゲ・薄毛に様々な原因があります。加齢によるものや薬の副作用によるもの、ストレスによるものなどがその代表でしょう。

比較的近年、多くの人に知られるようになり、治療方法が進んできたのがAGA(男性型脱毛症)です。これには男性ホルモンの一種テストステロンが強く関係しています。テストステロンは男性の性器を発達させたり、男性に性欲を呼び起こしたりします。また、筋肉を増強するのにも欠かせません。おそらくは、こういったテストステロンの役割が筋トレとの関連を想像させる原因でしょう。

ただし、テストステロンがAGAの原因となるメカニズムは複雑です。まず、テストステロンはそれ自体が不足、喫煙・過度の飲酒、ストレス、生活習慣の乱れなどいろいろな状況でジヒドロテストステロン(DHT)へと変化します。これが毛乳頭細胞の中にある受容体と結びつくと、せっかく生えている髪の毛が成長を止め、早めに抜け落ちてしまいます。通常ならば2-5年は成長し続けるのにたし、AGAの場合は1年も持ちません。放っておくと、さらに短くなります。このせいで、髪の毛の本数が減り、1本1本も弱々しいものになってしまいます。

ほかの人と比較してDHTの量が多いか受容体の反応が敏感な場合にAGAを発症します。あるいはその両方です。

単純にテストステロンの分泌量が増えたからといって、ストレートにDHTの量も多くなるものではありません。また、受容体の反応のいい悪いはかなりのところ遺伝で決まっています。なので、筋トレをやった結果、筋骨隆々になってテストステロンとDHTが増えたところで、それがそのままAGAにつながるわけでもありません。

たんぱく質は筋肉と共通の原料 しかし髪の毛用が不足することは考えにくい 

髪の毛を構成しているのは90%以上がケラチンというたんぱく質で、残りはほぼ水分です。また、まったく同じものではないものの、筋肉もたんぱく質でできています。これらのたんぱく質はまずはアミノ酸などの形で体内に取り込まれ、それを材料に髪の毛や筋肉に合成されます。肉や大豆などでとったたんぱく質もやはりいったんはアミノ酸に分解されます。

となると、「筋トレで筋肉をつけると、髪の毛に使うはずだったアミノ酸まで持って行かれて不足し、ハゲ・薄毛になる」と想像する人がいるのも無理のないところかもしれません。確かに、髪の毛の優先順位は低いため、極端にたんぱく質が欠乏すると髪の毛が生えにくかったり抜け毛が増えたりすることもあるでしょう。

しかし、実際のところ筋トレをやるような人は、食事にも気を使っていることが大半です。「良質のたんぱく質をとる」というのが筋トレとセットになっています。欠乏はまず考えられません。プロテインを摂取している人はなおさらです。「プロテイン」とは英語にしただけで、たんぱく質そのものですから。

活性酸素は老化を早めるものの影響は小さい

筋トレに限らず、激しい運動をする人が少し気になるのが活性酸素です。呼吸をして酸素を取り込み、細胞活動に使うと必ず発生します。活性酸素は免疫活動に欠かせないものです。しかし、同時に細胞をさびるかのように古びさせます。これは老化の大きな原因にもなっています。

筋トレをする人は全くしない人に比べて、大量の酸素を消費しています。活性酸素の量も多いと考えるのが自然です。「その分老化も進む」と想像しても無理はありません。その老化が頭皮に現れれば、ハゲ・薄毛ともなるでしょう。しかし、実は激しい運動による活性酸素と細胞の老化ははっきりわかるほどのものではありません。

一方、筋トレをすることで、血液の流れはよくなります。もちろん、血液は酸素だけではなく、細胞活動に必要な様々な栄養素を運んできてくれます。むしろ、新陳代謝がよくなって髪の毛にはプラス面のほうが大きいでしょう。

活性酸素を気にしなければいけないのは、日ごろストレスの多い生活を送っていたり、たばこを吸ったり、食生活が偏ったりしている人です。これらでも活性酸素の量は増え、筋トレとは違って代わりになるようなプラス面もありません。「老化がどんどん進む」ということです。これは髪の毛だけではなく、全身に影響します。

無酸素運動 ハゲるという噂もあるが……

筋トレは無酸素運動の一種です。呼吸が追いつかないぐらいに一気に集中して力を出します。ほかには短距離走、ハンマー投げ・円盤投げ、スクワットなどがあります。これらも、筋トレ同様に「ハゲる」とされることがあるものの、やはりそれほど単純なものではありません。

逆に、「有酸素運動はハゲ・薄毛の対策になる。改善する」という評判もあるようです。有酸素運動にはスイミング(中距離・長距離)、ジョギング、ウオーキング、サイクリングなどがあります。「体脂肪を燃焼する効果が高い」として痩身のメニューにされるようなものですね。実はこれも頭皮への影響は筋トレとそうは変わりません。「活性酸素は増えるけども、血行が良くなるなど健康へのプラス面のほうが上回る」といったところです。「健康へのプラス」の分、頭皮にもいい影響が出るでしょう。ただし、「直接的に効く」というほどのものではありません。

逆に髪が生えてきたという声も

「筋トレを始めたら、髪の毛が増えていた」という声も珍しくはありません。ハゲ・薄毛の原因は特定するのが難しく、本当に筋トレだけの効果で髪の毛が生えてきたかどうかは判断できないことが大半です。そこまで、髪の毛を気にしている人ならば、育毛剤・養毛剤を使う、髪の毛にいいとされる食材を積極的にとるなどのことも同時に行っているでしょう。

これまで申し上げてきたように、「体を動かした結果、血行がよくなって頭皮にもプラスになった」といった間接的な影響で髪の毛がプラスになった可能性があります。また、ストレスのせいで髪の毛が抜けていたのならば、筋トレなどで汗を流した結果、ストレスが解消したのかもしれません。

あるいは、「筋肉を効率よくつけるために」ととっていたプロテインが髪の毛を合成するための材料になったかもしれません。「食事のバランスが悪く、たんぱく質が足りていなかった」ということでハゲ・薄毛になっていたのならば、間接的ながらこれも「筋トレのおかげで髪の毛が増えた」といえるかもしれません。

AGAの治療は筋トレに悪影響を与えるか?

AGA治療薬プロペシアと男性ホルモンの関係

AGA治療薬の代表として知られているのがプロペシアです。これは医薬品としての製品名で、有効成分としてはフィナステリドが配合されています。また、ジェネリック医薬品といい、すでに特許が切れたプロペシアと同じ内容の医薬品も製造・販売されるようになりました。今では多くのAGA治療専門クリニックがこのジェネリック医薬品の方を使っています。

これはテストステロンがDHTへと変化する際に関係している酵素・5αリダクターゼの働きを弱めます。DHTの量も減ることになり、この効果でAGAの症状を抑えます。

AGA治療薬のプロペシアは筋トレの効果を弱める?

筋トレをする人たちが気になるのは、「フィナステリドの作用で、筋肉がつきにくくなるのではないか」です。ただ、これについては一般的には「影響はない」とされています。とはいえ、十分に医学的な検証された話ではありません。将来話が変わる可能性も残っていると考えていたほうがいいでしょう。

今のところ、「影響はない」とされているのは、「フィナステリドが減らすのはDHTであって、テストステロンではない」となっているのが理由です。男性の性器を発達させ、筋肉も増やすのはテストステロンです。「これが減ることがないのならば、筋肉の付きやすさにも影響がない」という考え方です。

ただし、決して多くはないとはいえ、フィナステリドの副作用として、「性欲が減退する」といった症状が出る人もいます。「筋肉に対しても、どこかで影響しているかも」といった心配をする人もいるのは、無理もないところかもしれません。

結局、「もし、影響があるように感じたら、担当医に十分に相談してみましょう」ぐらいのことしかいえません。筋トレの効果が出ないのは、AGA治療薬以外が影響している可能性も考えなければいけません。素人である自分だけで判断しないほうがいいでしょう。

「頭頂部が薄い」「前頭部から来た」で判断できるものもない

このように、筋トレとハゲ・薄毛の関係は簡単に判断できるものではありません。なので、「頭頂部が薄くなり始めた」「前頭部の両わきから後退するM字型ハゲが進行している」といって、そのハゲ方から筋トレの影響を見極めることも無理です。

まとめ

以上のように、「筋トレをするとハゲ・薄毛が進行する」とも「逆に解消に向かう」とも断言できないのは、ハゲ・薄毛の原因には様々なものがあり、また、個人個人の体質や日ごろの生活もそれぞれ異なるからです。

ただ、筋トレは体全体の健康度をアップさせます。さまざまな噂に左右され、ハゲ・薄毛との関係を疑って簡単にやめてしまうよりは、継続するのをおすすめします。

ただし、やりすぎがよくないのは何事も同じです。「筋トレを続けなければいけない」というのがプレッシャーになるようでは、ストレスを増加させることになり、それがハゲ・薄毛を進行させているかもしれません。また、筋トレのハードワークを支えるだけの食生活をしていなければ、何もやっていない人以上に栄養バランスを崩し、それが悪影響を与えて髪の毛が抜けてしまう可能性もあります。